さて、セルフプレーが多くなるとお客様同士のトラブルが増えてきます。
クラブとして一番困るのがゲストの方とメンバーの方のトラブルです。
キャディが帯同していれば、双方の事情が分かるのですが、ボイスレコーダーなどでその時の会話の証拠もないので、双方の言い分を聞いても自分の都合の良いように弁護するので判断のしようがありません。
20年前にコースで暴力事件が発生しました。
前の組が遅いので後続組が2度もボールを打ち込んでしまったのです。打ち込まれた後続の若いお客様が威勢が良かったので後続の打ち込んだお客様の顔面を殴ってしまったのです。
収拾のつかいない事態になったキャディが怖くなって慌てふためいてマスター室に通報をしてきました。
現場に急行すると、双方の組が取っ組み合いの喧嘩になるほど険悪な状態になっていました。
まず、このトラブル組の双方の言い分を聞いたのですが、どちらもどちらでトラブルの原因は双方にあると判断しました。
しかし、現代においてはどんな状況にあっても暴力を振るった方が不利になります。訴えられれば傷害罪になるので、ことの善悪前に負けてしまいます。
殴られた相手は「警察を呼べ」と憤慨しています。
警察を呼んだら事情聴取が長くなり、「プレーは中断するようになりますがいいですか?」といったん宥めて置いて、傷害事件にすることは倶楽部の恥よりも、双方にとって後味の悪い結末になるので止めさせました。
殴られた中年のお客様は殴った若い相手のお客様に、「俺にも殴らせろ!」と豪語しましたが、若いお客様も威勢が良かったので「警察が来るまでに半殺しにしてやるぞ!」と凄い形相で反撃したのです。
収拾のつかない事態になるのを防ぐために「ここで喧嘩をされたら他のお客様にご迷惑です。もし、喧嘩を継続するなら警察に通報しておきますから、この場所から退場してクラブの外でやってください」
「なんだとこのヤロー?」凄い形相で若いお客が今度はこちらに飛び火をしてきました。
「ゴルフ場はゴルフをするところで喧嘩をするところではありません。ゴルフ場利用約款にも紳士的にマナーを守りプレーをすることを謳ってあります。それに違反した場合はプレーを中断してお引き取りを願うようになっています」と粋がるお兄さんに言って、そのお兄さんの耳打ち際で「傷害で訴えられたら一発50万円も取られた事例があるから注意してくださいよ。第一、これから警察に行って事情聴取をされてそのまま拘留されるかも知れませんよ。傷害は立派な犯罪ですよ。ここは穏便にやった方が得だと思いますが、どうですか?」と言ってやりました。
結局、興奮した感情も時間が少し経ったこともあり、この威勢の良いお兄さんは、聞く耳を持ちボクの提示した和解案に乗ってきました。
打ち込み、スロープレーは双方に反省すべき点がある。
しかし、暴力を振るうことは法律的にも悪いことなので、殴った本人は殴られた人のプレー代をすべて負担する。その他、帯同のお客様にも迷惑をかけたので昼食代等を負担することで一見落着しました。
このように原因がはっきりしていれば、クラブ側も対処の仕方があります。
しかし、セルフの場合「言った、言わない」の世界ですから双方の言い分が自分の都合の良いように言うので事実関係が立証できません。
スロープレーや打ち込みに対しては、メンバーであろうがゲストであろうが正当に注意していいと思います。
しかし、初ラウンドのプレーヤーに対しては、多少は寛大な気持ちでマナーなどを教えてあげて欲しいものです。
ラウンド終了後に浴室などで双方が顔を合わせても「済んだことをとやかく、言い過ぎるのは嫌がらせにとられます」
連れの男性のお客様から「どうして服装のことまでプレー後に言われなければいけないのか?これからゴルフをせっかく楽しもうとする若者の初ラウンドが台無しになってしまった」と電話でクレームがありました。
張り切って揃えたクラブもゴルフウェアも、大好きな大栄カントリー倶楽部でこんな事件に巻き込まれて、悔しくて、悲しくてその同伴の若い女性は、帰りの車中で泣き崩れていたそうです。
双方の言い分は確認していません。
クレームを言ってきたゲストのお客様も怒っている訳ではありませんでした。
「バンカーを均さず注意されたので、それにはお詫びを申し上げました」マスター室にもお詫びをしてきたそうです。
しかし、プレー後に服装のことで浴室の中迄とやかく言われるのはいかがなものかとの正当なクレームでした。
「いつも大栄のコースが好きでラウンドしているのに、今回はとても残念だった」と言いたかったようです。
私たち現場のスタッフのモットーは、「お客様を笑顔で迎え、笑顔でお帰り頂く」です。
例え、善意で言った言葉でも、TPOに反した言葉はモラハラになります。
上司の警察官が善意で注意した言葉でも、部下の警察官が悪意に取れば、世の秩序を守る警察官が司法で厳重に管理されている拳銃で上司の頭をぶち抜く恐ろしい時代です。
これからせっかくゴルフを始めようとする若者を自分の主観だけで傷つけるような言葉を吐くことだけは十分ご注意を願いたいものです。
とにかくゴルフ場は、マナーを守ってゴルフを楽しむところです。
会員であろうがゲストであろうがゴルファーには違いありません。
言った言葉に反発されれば、それはOBにもなれば、ロストボールにもなります。
打ったボールと口から出た言葉には、自己責任でお願いします!